社員の価値観を見える化し変える方法

 

1.スキルで採用してはいけない

スキルのある人を採用した方が良いに決まっています。しかし、スキルがあっても、考え方や価値観が違うと、一緒に仕事をするのは、、、うまくいきません。

私が父に代わって、株式会社DIVを経営していたころ、店は池袋の西口にありました。私は、必要なスキルを持っている人を広く募集し、採用しました。店の接客レベルを上げようと思えば、化粧品店で接客していた人を採用し、アクリルの加工レベルを上げようともえば、プラスチックの加工経験者を採用し、注文票を用いて顧客管理データベースを作ろうと思えば、開発経験者を採用しました。さらに、加工を機械化しようと思い、元日産の下請工場の経営者を採用しました。

しかし、思うようにいきませんでした。外注業者の方が、よくやってくれたものです。

一方、私に代わるまで、父は就職に困っていた人たちを雇っていました。知人に、「うちで働きそうな人はいないか」と聞いて回ったせいもあり、ダイビングが趣味の魚屋の店員、ダイビングインストラクター、写真屋の店員など、ダイビングと写真の関係者を集めていたのです。彼らは、アクリル加工の素人でした。しかし、それなりに何とか技術をマスターして作っていたのです。

いい外注業者は、こちらの実現したいことを汲んでくれて、提案をしてきてくれたり、作ってきてくれます。相談にものってくれ、とても頼りになる存在です。一方、社員は、そこまでしてくれません。いい大人が指示待ちです。

振り返ってみると、彼らは、総じて父のことを尊敬し感謝していました。採用し、技術を教えてくれていたのですから。私の場合、社員とは、給料を払うからあなたのスキルを提供してほしいという、GIVE&TAKEの関係でした。また、父はどこか自分と同じようなバックグラウンドを持った人を集めていたのに対し、私は全く異なったバックグラウンドの人たちを集めました。

私は彼らを理解することはできなったですし、彼らも私を理解することはなったと思います。私のやり方、考え方、価値観、ましてや目指していたところなどわかりようがありません。これでは、指示待ちになっても仕方がりません。指示待ちになってしまったことで、せっかくの知識もスキルも活用されないまま眠らせてしまっていたのです。

 

2.価値観とはどんものなのでしょうか?


価値観は、私たちが日頃意識していないでいる、好き嫌いや行動を左右しているものです。そして、なかなか変わらないものです。地震など大きなインパクトががあると変わることもありますが、普通、なかなか変わらないものです。変わらせるには10年かかります。1~2年ではよっぽどのことがない限り無理です。

■新潟の老舗旅館大橋屋
大橋屋さんは、団体旅行が減る中、生き残りをかけ団体客から個人客へお客様を変えました。
その際、接客のやり方をいままでとは根本的に変えたのです。
「お客様一人一人に満足していただくためにできることはできるだけやっていく」と考え方も変えました。
板場は反論しました。仲居さんの半分も反対しました。
社長は、このままでは大橋屋はつぶれてしまうと懸命に説得したが、理解されませんでした。
結局、板場全員と仲居さんの3割を解雇したのです。

しかし、大橋屋さんの取り組みは難しいものではありませんでした。
遅れてくるお客様がいれば、夕食を一人分だけ後から作ったり、結婚記念で旅行に来ていると聞けば、お祝いものを出したり、ちょっとした気配りをするだけです。やろうと思えば、誰にでもできることです。
やるのを自然と意識しないでもできるようにまでなることが難しいのです。

 

ところで、「繁盛店と低迷店の差はほんのわずか」だということに気づいていますか?
同じチェーン店でも繁盛店と低迷店ができてしまいます。それは、些細な気配りと笑顔の差なのです。

ミスタード-ナッツの接客技術コンテストで全国一位になった、長田さんは大学生のアルバイトです。長田さんは、「すべてのお客様にあった接客をすること。その人が求めていることを考えて行動すると言うことだけなので。」と言っています。あったらいいなと思うサービスをマニュアル関係なく、どんどん提供しているのです。
かといって、難しことをしているわけではありません。乳母車を押しているママさんが店に入ろうとしたら、ニコニコしながらドアを開ける。帰る時には、ドアを支えてあげる。それだけです。気づけば誰でもできることです。

問題は、気付かないこと、気付いてもやらないことです。
すぐに気付き、気付いたら自然とドアを開けていた。そんな行動がとれるようにならなければ、ならないのです。

この自然な行動を左右しているのが、価値観なのです。

「アルバイトの私がそこまでやることないわ」
「カウンターから出ていったら、レジに人がいなくなってしまう、、、」
と思ったら、ドアは開けられません。

ママさんは、乳母車を片手で持ちながら、反対の手でドアを押して、ドアがタイヤにぶつかるのを避けながら必死になったはいらなければなりません。大抵の店員さんは、それを、カウンターから、見て見ぬふりをしながら仕事をしているのです。

 

3.相手の価値観をかいま見る

今度面接するひとは、サービスに対してどんな考えでいるのでしょうか?
先回りしてサービスるということを知っているのでしょうか?

相手の価値観は、行動を見ていれば分かってきますが、他にも垣間見る方法はいくつかあります。
①順位付け 大切だと思うことをポストイットに書いて、それを順位づける
②関連付け マインドマップのような連想図を描いてみる+プロファイリングをする
③判断に迷うケースを設定し、どう対応するかを聞き出す

 

①順位付け 接客において大切だと思うことをポストイットに書いてそれを順位づける

Aさんが作った順位表は下記のようになりました。
感謝の気持ちという気の持ち方が挨拶や笑顔という態度になり、それがお客様に伝わってい行くと考えてるようです。

1   感謝の気持ち
2   元気な挨拶
3  愛想
4  ニッコリとした笑顔
5  細かい気配り。
6  色んなお客さんへの気配り
7  商品選び
8  アドバイスのタイミング
9  お客様の立場に立った振る舞い
10 ハキハキとした話し方やキビキビとした行動

 

Bさんが作った順位表は下記のようになりました。
気配りが大切で、その上で、お客様のニーズにこたえていくという実質的なことが大切だと考えているようです。

1  細かい気配り。
2  色んなお客さんへの気配り
3  商品選び
4  アドバイスのタイミング
5  元気な挨拶
6  愛想
7  感謝の気持ち
8  ニッコリとした笑顔
9  お客様の立場に立った振る舞い
10 ハキハキとした話し方やキビキビとした行動

このように、AさんとBさんとでは、同じ接客でも重視している項目は同じでも、その重みづけが異なっています。これは、考え方が異なっているためです。この考え方を知るためには、連想図が役に立ちます。

 

②関連付け マインドマップのような連想図を描いてみる+プロファイリングをする

社員の考え方の差が、問題を引き起こしています。

例えば、株式会社ひろやさん(酒屋とコンビニエンスストアー経営)の場合、

問題1 コンビニの副店長の態度が良くない
副店長は、「店長はいつも冷たい」と思っており、なにかと反発しています。反対に、店長は、「なんでそんなことで怒っているのか分からない。ヒステリーは嫌だね」と思っています。そこで、店長は、適当に放って置きました。すると、副店長の勤務態度が悪くなってきたのです。

店長(HR)さんが作成した図

副店長が作成した図

店長の図からは、物事整理して把握しており、業務を中心に考えていることが良く分かります。発注、データ整理、配達、社内的には教育、報告とバランス良く全体をとらえています。報告も自分の業務の一つと認識しています。業務志向といえます。

反対に副店長の図からは、本人の気持ちばかりが描かれています。成功やうれしいことは上や上向きに描かれ、失敗や悲しいことは下や下向きに描かれています。業務内容はなく、仕事と気持ちは一対になっていることが分かります。感情志向といえます。

この二つから、店長は業務志向で、副店長が感情志向のため、すれ違っていることが想像できます。副店長にしてみれば、「なんでこの苦しい気持ちを理解しないのか」と思い、店長は「いいからがたがた言っていないで仕事しろよ!」といった感じです。副店長は、自分ばかり見ていることから外を見るように視野を広げ、店長は、同僚や部下の気持ちをもう少し察した上で指示を出す方が効果的であることを学ぶ必要があります。

 

問題2 店長が報告や連絡、相談をしてこない。いくら注意しても改善されない。社長としては「イライラする」という気持ちです。

これは、社長と社員のプロファリングの結果の一部です。(プロファリングとは、その方の使っている単語や話し方、態度から考え方の癖、価値観を分析する手法です。ここでは、LABプロファイリングの手法を使っています。)

店長は、CSVの中のHRさんです。このHRさんと社長さんとを比較していきます。
社長は、主体行動型で、HRさんは反映分析型です。社長は、自分からどんどん行動していきます。悪く言うと、考える前に行動してしまうといった感じです。HRさんは、言われてよく考えてから行動するという一歩も二歩も遅い感じです。また、社長は目的のまっしぐらに進んでいくタイプであるのに対し、HRさんは問題が起きるとその解決のために頑張るタイプです。社長は問題を無視し、HRさんは目的にあまり魅力を感じていません。さらに、社長は自分の判断軸で動くのに対し、HRさんは他者がどう思っているかが一番気になります。社長がどう思っているかが気になっているでしょう。

HRさんは、問題が起きた時に報告すればいいと考え、あまり報告はしません。報告しろと言われても、すぐには報告しません。じっくり考えゆっくり確実におこなうでしょう。これに対して、社長がしびれを切らしていると思われます。報告や連絡がないのではなく、遅かったり回数が少なかったりしているのです。

そこで、変わるのを待つよりも、社長ご自身から、こまめに聞いた方が現実的です。
もし、コンビニの情報を早く知りたいのであれば、 酒販売のOさんを、コンビニの店長にすえた方が、社長としてはストレスが減ります。

 

③判断に迷うケースを設定し、どう対応するかを聞き出す

判断に迷うのは、片方をとるともう片方をあきらめなければならない状態です。
例えば、お客様は店の前に並んで待っています。でも、目の前のお客様には丁寧に仕事をしなければならない。時間がかかる。あなたは、どうしますか?

このような質問を作り、答えてもらいます。
・外のお客様を大切にするのか、目の前のお客様の大切にするのか?
・その理由は?

答えは、紙に書くのではなく、口頭で返答させたほうが本音が出ます。
多くの場合、理屈が通っていない返答がきます。
この時、理屈が合わないということを指摘しては いけません。
あくまでも、考え方や価値観、好き嫌いを引き出すためにおこなっているの、自由に話させることが大切です。
相手の言うことをそのまま受け止め、そう思うんだ~ そう感じるんだ~ということを集めるようにしてください。

 

4.価値観を変えさせるにはどうすればいいのか?

価値観を変えることはできないと思います。数十年かかって築き上げてきた、莫大な脳の神経のつながり方が価値観なおですから。
できるとしたら、価値観を擦り合わせることです。

①しかし、誰でとでもすり合わせできるわけではありません。
変わる気のある人ならできますが、変わる気のない人には無理です。しかし、仕方なく朝礼で発表してくれる人ならなんとかなるかもしれません。

また、店や上司に対して愛着や尊敬、信頼感などをもっているとやりやすいです。なにも感じていない場合には、難しいです。受け止める素地がありませんので。

 

②自分の行動とその時に考えたこと、気持ちや感じたことを振り返ることを繰り返すことで、価値観を徐々に変えていきます。

進め方===================

・振り返りは朝礼で行います。※朝礼には見えない費用がかなりかかっています。
15分早く会社に来てもらい朝礼を15分早くはじめ、その15分間に振り返りを行うのが良いと思います。特別に、振り返る時間を設けるのはよくありません。朝礼の中に負担にならない程度に組み込んでしまいます。お客様からのクレーム連絡の代わりのような位置づけにします。

・振り返りは、一人一人発表することで進めていきます。

15分で3人、さらに3分間でリーダーが話します。残りの3分間は話が長くなっ時の予備の時間です。最初は、みなさん話すことが思いつかないのですが、無理にでも思い出して話してもらいます。思い出す訓練が必要です。

・振り返ることは、3人の方が、順に話していきます。

まず、会社の価値観に合わなかったな、、、と思ったことを話します。その時にしたことと、考えたこと、気持ちや感じたことを振り返りかえります。
次に、価値観にあったなと思ったことを話します。同様に、その時したことや、考えたこと、気持ちや感じたことを振り返ります。※この時、リーダーはいい悪い評価はしません。
最後に、リーダーが自分の体験を話します。この体験の話が、価値観をどう理解するかのガイドになります。リーダーは毎日話さなければならないので、大変です。しかし、価値観の基礎となっており、社員の価値観の形成はリーダー次第ともいえます。

・中2日で順番にやっていきます。
今日話したら、次にその人が話すには3日後になります。ですから、9人程度がひとグループになります。人数が多く順番が中2日ではみんなに回っていかない場合には、グループを分けたほうが良いと思います。

・3ヶ月に一度、長期間にたいする振り返りを行います。
3ヶ月ごとに、順位付けと連想図(マインドマップ)を描き、変化を見ていきます。
このとき、リーダーも描きます。描かせっぱなしではだめです。基準となる絵が必要です。
社員のものとリーダーの門を比べ、思ったことを話し合っていくと、理解が深まります。

これを、1年やれば、かなりすり合わせができると思います。
もちろん、朝礼にでない、出ても発表しないという人も出てきます。
残念ですが 、やらない人とは縁がなかったと思うしかありません。

 

 

これは、ある意味洗脳ともいえます。価値観を店の都合で変えてもらうのですから。
反発も強いと思います。
ですから、なるべく、もともとそのような価値観を持っている方を採用するのが必要なのです。
採用の時から、自分の価値観と似た人を選ばなければならないのです。

スキルも大事ですが、スキルはある程度なら1年で身に付けられます。 しかし、価値観が全然違う人の価値観を変えることはできません。

価値観がお客様にどう接するのか、その行動を決めています。

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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