安売りではなく人と活気を売って競争に勝っているスーパーマーケット

同じ商品を売るのでも、周囲の競合他社が価格や買いやすさで勝負してくるのであれば、売る人や雰囲気、親切感といった違うものを売ることで勝負を避けることが出来ます。しかも、周囲と全く違うことが、逆に魅力を引き立たせ、ファン顧客を増やしていく場合があります。

 

 

<ダイキョーバリュー>

会社名       株式会社 ダイキョープラザ
代表者       杉一郎
設立年月日    昭和53年 5月18日
資本金        14,800千円
業務内容        生鮮食品スーパーマーケット
年商          121億円 2007年3月期 会社全体 (弥永店単独では27億円)
従業員数       440名 食品SM内訳正社員 100名
本社所在地   〒811-1321 福岡市南区柳瀬1-33-10

 

1.「安売り」競争では勝てないから「ひと」売りに変えた

杉一郎会長は、9店舗を経営。スーパーを30年続けています。
激安競争に巻き込まれた杉会長は、「体力勝負を続けると、いつか大型スーパーに負ける。違う価値観を確立しないとまずい」と考え、人と活気を売る今のスタイルに辿りついたそうです。

ダイキョーバリュー弥永店の立地です。地図のGのところがお店で、周囲を他のスーパーカーが囲んでいます。

ダイキョー立地

 

周辺に多いのが、マルキョウというスーパーです。
マルキョウは、売上約900億円、従業員数2700名で、ダイキョーの7倍以上の規模で、よくある普通のきれいな価格勝負のスーパーです。

マルキョウ写真

マルキョウチラシ

 

 

こういった大きな競合スーパーにに囲まれているなか、ダイキョーは競合他社と違う価値を売ることで生き残ってきています。

ダイキョー弥永店のチラシには価格が載っておらず、代わりにスタッフとその人自身の言葉が載っています。「一日一善で頑張ります」「結婚しました。がんばります。」「子猫が産まれました。」などなど。

スーパーなのに、価格勝負ではなく、スタッフ勝負なのです。
つまり、安くはないのです。

ダイキョーチラシ3

 

2.また、売り場の雰囲気が違います。

店頭には大きなテントがあり、そこでいつも市場みたいなものを開いています。また、店内も雑然としていて、その中でテナントも大きな声で売り込んでいて、雑然とした活気があります。商品の見やすいきれいな買い物しやすいスーパーとは、全然違います。

マルキョウのような、よくある普通のきれいな価格勝負のスーパーには特売日にしか行かず、普通の日にはダイキョーにばかり行くお客様に、「なんでそんなに毎日、ダイキョーにいくのですか?」と聞いてみると、「ダイキョーはおもしろい!お店の中のテナント同士が競い合ってて、凄い気迫があっていい! それに、毎日、何があるか楽しみ!」と言うのです。

店の中はいつも活気であふれており、魚屋や肉屋が競争をしていて、掛け声が飛び交っています。また、生産者の顔写真が貼ってある野菜コーナーも人気で、駐車場は空き待ちが当たり前となっています。

ダイキョー市場  ダイキョー店内

 

 

3.ダイキョウーバリューがファン顧客をつくるためにおこなっていること

ダイキョーバリュー弥永店には、一日平均4000人が来店します。
お客サービスの費用は、年間1千万円以上、売上は27億円で同地区の同じようなスーパーに比べて五倍以上の費用をかけています。

杉一郎会長は、「お客さまに、『ありがとう』と言われてはだめ、『申し訳ない』と思ってくれるほど感動してもらわなければならない」と言っています。

単なる「ありがとう」では、お客様はリピーターにはなってくれない。安く売らずにリピーターにしたければ「申し訳ない」とまで言わせないといけないということです。逆に言えば、「そこまで感謝されれば、またきてくれる」と言うことです。

 

申し訳ないと言わせるために何をおこなっているかというと、「徹底的に、お年寄りや、子供連れの主婦など弱い立場のお客様を助けること」をおこなっています。

①夕方、レジが混雑して並んでいると、お客様に飴やガムを配ってくれる。
②足腰の弱い1人暮らしの高齢のご老人には、車で家まで送迎してくれる。
③荷物がたくさんになると「車まで運びましょうか?」と声をかけてくれる。
④お茶のセルフサービスがある。
⑤荷物の搬送サービスをしてくれる。
⑥雨の日には「ご自由にお使い下さい」とタオルが置いてある。
⑦急な雨の時、困ったお客を見つければ、陳列した商品の傘の包みを破って「どうぞ、お使い下さい。今度、ご来店の時に、お戻し下されば結構です。」と差し出してくれ、名前や返却予定を聞くこともしない。
⑧商品を精算後、かごを片付けようとすると、店舗に2~3人配置されたお客様係がさっと手を差しのべて片づけてくれる。
⑨小さい子どもを抱えたお客やお年寄りには、袋詰めをかって出てくれる。
⑩「お友達から誕生日プレゼントでもらった大事なマイバックを落としてしまった」と店員さんに相談すると、必死に店内を探し回ってくれる。
⑪あちらこちらで、お客は従業員と会話を楽しんでいる。お客が従業員に「いつも、明るく頑張っているね。」と言えば、従業員はお客に「おばあちゃん、いつまでも元気でね。」と優しく返してくれる。
⑫日曜朝市では、朝から行列に並んでいるお客様に、300人分のとん汁、甘酒、ぜんざいを朝早くから来てもらっている御礼として無料で提供している。

 

4.価格は高いのに、1日に2度、3度と来店するお客様が多い

・価格は大手のスーパーより高く、チラシにも特売品や衝撃的な価格は一切載っていないのに、1日に2度、3度と来店する人が珍しくありません。中には4度の人もいます。リピート率がものすごく高くいのです。※客単価は???ですが、、、。

・お客は、一応買い物に来てはいるのですが、コミュニケーションを求めて来店している節があります。多くのお客様は、スタッフや他のお客さんとと話をしていて、それを楽しみにして1日に何度も来店しています。引きこもりがちなご老人には、縁日みたいな雰囲気の中、ダイキョーで他の人と話すのが楽しみになっているようなのです。

 

5.周囲と違うことが逆にファン顧客を作り出している

ダイキョーは、価格を安くせず、内装や備品にも費用を掛けずに経費を浮かし、その分お客様サービスに費用を掛けることで、お得意様を増やしています。
また、財務体質も良く、2009年度時点ですが、有利子負債がほとんどなくなっています。

周囲のスーパーがきれいで買いやすく安売りで勝負しているため、逆に、人や活気ある雰囲気を売っているダイキョーの魅力が引き立ち、ファンを増やして利益を伸ばしているように見えます。

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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