腕に自信のある料理人なら、自分で考案した料理をお客様に食べていただき、美味しいと言っていただきたいものです。 しかし、いろはにほんさんは違います。 徹底的にお客さんが買っていく惣菜、喜ぶお弁当を作るのです。だから、お客さんの8割がリピーターなのです!
いろはにほん 惣菜・お弁当販売
所在地 滋賀県近江八幡市
従業員 5名(パート3名)
営業時間 8:00~17:00
1.きっかけはニューヨーク?
土木業の営業をしていた社長(大田代表)が、ニューヨークに住んでいる友人から「現地で和食ブームが起きている。ニューヨークでいっしょにやらないか」と誘われ、とりあえず、自宅の一角で惣菜屋をはじめることにしたのが始まりだったそうです、、、。
2.ここは、惣菜屋には厳しく弁当屋さんに適しているところ、、、
1)惣菜屋さんはほとんどない、、、
「いろはにほん」は、上の地図の下向きの赤い↓のところです。
紫のアルファベットはコンビニを示しており、肌色の小さい点はスーパーマーケットを示しています。
惣菜屋さんはありません。コンビニばかりです。
惣菜屋さんの競合は、コンビニエンスストアーとスーパーマーケットの惣菜です。
この地域には、
・コンビニエンスストアーとスーパーマーケットが多いこと
・惣菜屋さんが無いこと
・人口が少ないこと
から惣菜屋さんは成り立ちにくいのでは???と考えられます。
2)お弁当屋さんは多い
この地図は、弁当屋さんの位置を示しています。
赤い下向きの↓は、いろはにほんの位置を示しています。
いろはにほんの左上の官庁街を周辺と駅前に弁当屋さんが多くあります。
この地域では、弁当屋さんはやっていきやすいみたいです。
3.お弁当の宅配を始めたおかげでお店にお客様が増えた
いろはにほんは惣菜屋さんとしてスタートしましたが、、、
近江八幡市の人口密度は580人/km2で、たとえば、東京都文京区の1/30以下しかありません。
待っているだけではお客様は来てくれませんでした。
しかし、会社でお弁当を食べたお客様が、お店に買いに来てくれるようになったのです。
お店では、お客様が惣菜を自分で自由にとってお弁当にすることもできるようにしていましたし、お弁当の宅配もしていました。この宅配のお弁当は、周辺の会社が会議で使うことが多く、価格も1000円以上と高い場合が多いものでした。
会議でお弁当を食べて「美味しい」と思った方が、わざわざお店までお弁当を買いに来てくれ、お店にお客様が増えたのです。
これらのお客様が、リピーターになってくれたのです。
4.料理は美しくないといけない、楽しく作らないと美味しくならない
いろはにほんの代表の考え方は少し変わっています。
「料理は見て美しくないといけない」
「つくっている人が楽しくないと料理って美味しくならない」
と考えているのです。
お店は15坪。店舗が7.5坪、厨房が7.5坪で厨房はオープンになっています。
そのため、厨房内のスタッフの話し声や笑い声、料理している音、臭いも、ぜんぶ店舗に流れてしまいます。厨房の雰囲気はお客様に伝わってしまいますし、話も全部聞かれてしまいます。
スタッフは、悪口や愚痴は言えません。
前向きな話をしながら総菜やお弁当を楽しく作らなければつくらなければならないのです。
※ 「ここの料理は美味しい。決して派手なものじゃないが毎日食べられる」というお客様の感想が多い。
5.メニューは作らず、売ってみて売れるものを売っていく
1)売れたらものをまたつくる=売れないものは作らない
お惣菜もメニューがないので、幾つか良いなと思う惣菜を作り、売れてくものを作り足すようにしています。※売れそうなメニューを考案するのではなく、売ってみて、売れるものを売っていくというやり方です!
2)お弁当のメニューも作らない
お店には、お弁当はありません。お惣菜がいくつか置いてあり、お客様は、店頭にある惣菜を自分で組み合わせ、自分の好きなお弁当をつくっています。
3)注文がきたらそのお客様にあったお弁当をその都度デザインするオーダーメイド弁当
企業や結婚式などで頼まれるお弁当は、完全なオーダーメイドなんです!!!
例えば、結婚披露宴のあとの親戚だけの集まりに出すお弁当の注文がきた場合、
・最初に、具体的にいろいろとお客様にヒアリングします。予算、目的、お酒を飲むのか、年齢層は、ボリュームが多いほうがいいか、魚がいいのかなど(すべて和食にしてほしいという依頼もある)。
・次に、お弁当の器選びから、どんな献立にするのかを、スタッフたちがその場で考えます(いくつかのレシピを参考にする)。
・そして、繰り返しご注文をいただいているお客さんの場合には、前回には入れていなかった惣菜を入れたりするように内容を工夫します。※今までオーダーあったものは、すべて記録している
・献立が出来たら、お客様に提案します。
・OKをいただけたら、作成に入ります。
※献立は、お客様の予算に応じて都度こちらから提案する(実際にはお任せが多い)。
5.成果 2010年現在
・リピーター率は80%(一度食べたらまた食べたくなる)にもなっています。
・日商17万円、月商500万円 月300~400食注文
・店頭の惣菜を組み合わせてお弁当を作るため、廃棄ロスがほとんどありません。
→ 2012年現在、ララポート守山店内と県庁前に支店を出しています。
いろはにほんさんは、「お客さんが買っていくもの・喜ぶもの」を作るのです。
「売れるものを作っていく」という考え方はサイゼリヤも同じですが、サイゼリヤでは「美味しいものが売れるのではなく、売れたものが美味しいのである」という考え方をしています。 しかし、特に惣菜の場合、お客様は必ずしも美味しいからと言う理由で買うわけではありません。健康そうだから、ダイエットしているから、お肉を多く食べないといけないから、、、理由はいろいろです。 ですから、
お弁当でも同じです。 お客様がお弁当を買いたい時、お店の事前に決めたメニューから選ばせるのではなく、毎回、オーダーメイドでお客様の事情や好みにあったお弁当(内容と器)をデザインしています。デザインは、「今まで注文していただいたお弁当の献立データ」をもとに、お客様が食べたいものや食べたことのないもの、お弁当を依頼してくる目的などを考慮してその都度おこなっています。 完全なオーダーメイドなのです。 このときも、「美味しいものを作る」のではなく、「お客様が喜ぶお弁当をスタッフが話し合ってデザイン」します。ですから、いつどこで誰が何のためにお弁当を食べるのか、事細かくヒアリングをするのです。 |
※これらを支えているのが、「スタッフが楽しく働ける」とい労働環境です。
仕事がつまらなかったり、スタッフ同士がいがみ合っていたら、スタッフが毎回話し合ってお弁当のデザインを決めるなんてことは出来ません。美味しくて、見た目にきれいな惣菜を考案することも出来ないでしょう。
オーナーは、現場のスタッフの自主性とスキルを活かし、スタッフをやる気にさせることに成功しています。
この点が、一番難しい点です。他のところは真似できても、ここは真似できません。。。
採用方法に秘密があるのでしょうか?