あなたから買いたいと言わせる専門店ならではの接客

 

専門店の接客は、高い知識と品揃えを背景に、お客様に合った商品を提案してあげることだと思っていませんか?

確かにそうです。
しかし、専門性が高ければ高いほど、コミュニケーション力が必要になってくるのです。これがないと、高い専門性が活かされず、お店の価値が低くなってしまいます。お得意様が増えず、いつまでたっても自転車操業です。

 

1.お客様が本当に欲しいもの

お客様の専門店への期待とは
お客様は、〇〇専門店に行けば、「その分野については最高によく知っていて、なんでも相談でき、きっと欲しいものが手に入る」と期待しています。

しかし、お客様が欲しいのは、商品ではなく商品を買うことで「〇〇になる」ことです。
服なら、友人や家族から褒められたり、街を歩けば素敵ね~と思われたりすること。
レストランなら、最高の料理と接客が受けられ、女性とより仲良くなったり、友人と打ち解けたり、取引先と本音が話せたり。

私たちのの仕事は、その実現のお手伝いすることです。

 

2.お客様にこういわれるとうれしいものです

最近お客様から言われてうれしかったことはありますか?
「会社で『最近センスがよくなったね』と言われたんです」
「ここで買った服を着ていると『いいのを着てるね』と必ず言われるんです」
「最近ママさんの集まる席で『それどこで買ったの?』と聞かれることが多くなった」
「おたくで買った服を着ているときだけ聞かれるから私に合ってるのかな」
と言っていただきました。

「あなたのおすすめ料理とてもおいしかったわ!」
「あなたに聞いてよかった」

 

3.この言葉をいただくためのしている接客

1)ある婦人服のセレクトショップの接客についての店長さんの話です。
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お客様は探しているものがあって来店するので、まず最初は、ご希望の商品を探してあげるんです。

探してあげた上で、今度は、私が似合うと思う服をお勧めいたします。
お勧めするのは、私が”このお客様には似合うに違いない”と思う服で、お客様ご自身ではあまり気づいていないものです。
しかも、お持ちの服やお買いになった服とコーディネートできるものを選ぶようにしています。

ちょっとしたコーディネートでとても素敵になる方は、想像以上に多いんです。
お顔に合う色や色の強さや面積のバランスをちょっと変えるだけで、想像以上に映るようになるんです。

鏡で見ていただくと、とても喜んでいただけます。
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このお店では、
①まず、お客様のイメージしている商品を提供する。
②その上で、こちらからお客様に良いと思う商品を提案する。
③その良さを確認していただく。
ということをしています。

この中で、お客様に似合うと思う商品を考え、お客様はその提案を受け入れています。

では、どのようにして、
お客様に良いと思う商品を考えるのか? 単にこちらから見て似合うと思う服を提案しているだけなのか?
なぜ、お客様は店長の提案を受け入れて買うのでしょうか?

 

2)以下の文章は、食べログの中にあるお寿司屋さんに入ったお客様の感想です。

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開店と同時くらいに入ったのだろうか、私の他にはお客さんもなく、好きな席を勧められたので、カウンター席の端に腰掛ける。カウンター席の他、4卓程、テーブル席もあるようで、家族連れでも入れそうな店内である。御影石のカウンターにやや低めの板場と、カウンターから調理している様子がよく見える。

「何か摘みでも造りましょうか?」と尋ねられる。こちらも昼からの気分の続きで伺ったので、とりあえず、『日本酒』と何か『摘み』をお願いする。何となく、酸っぱいものが食べたかったので、「酸っぱいものが欲しい」とお願いもしてみたりした。しばらくして、吟醸系の日本酒と小肌と鯖のお造りが出てきた。まさに「食べたいな~」と思っていたのが、〆た小肌と鯖であったので、嬉しかったりする。

大葉ときゅうりと〆鯖をたたいた身を海苔で巻いた変わり寿司のような「摘み」をパクつきながら、吟醸香の強くやや甘みを感じる日本酒をやる。口の中で日本酒のほのかな風味が膨らみ、幸せな気分になった。小肌の刺身に箸を延ばしたとき、大将が唐突に話かけてくる。「お客さん酸っぱいものが欲しいっていうから、その小肌を出したんだけど、本当の小肌の味はこっちなんだよ。」とおっしゃる。大将がおっしゃるには、私が箸を伸ばした小肌は大将としては〆過ぎらしい。「こっちも食べてみな」と出された小肌を頂いてみると、〆過ぎの小肌よりも、歯が軋むような小肌独特の身が締まっている食感があり、こっちの方が小肌らしいなと思った。

その後、堰を切ったかのように、大将は色々と蘊蓄を披露して下さる。魚で商売している寿司屋さんならではの話ばかりだ。例えば、サンマは8月~9月くらいのオホーツク海産のものでないと、鮮度が落ちているらしい。それ以後は定置網で揚げるため、暴れて、鱗等を飲んでしまうらしい。(確かに鱗が重なって入っている肝を食べたこともあるなとその時、思った。)とか、鯖の脂が乗っている場合は、酢が入らないとかとか・・・。「なるほどね~」と思いつつ、日本酒の杯を重ねていってしまった。

その後、平目の薄造り、あん肝の煮付け等が供せられる。特に、注文したわけではない。大将が適当に見繕ってくれたものである。が、どれも、私の好物だ。長年の経験の賜物なのだろうか、はずれがないのは、お客さんの気分や嗜好を察するのに敏感な方なのだろうと思った。

最後にもう一度、小肌を『握り』で頂いて、〆とした。お会計としては、7,000円を超えてしまったが、お酒を呑まなければ、3,000円以内で収まったと思われる。気持ち良く、呑み食いができたと思う。久々に馴染みになりたいと思える店を見つけ、やや高揚とした気分で店を後にする。通いたいと思えるお店であった。

(食べログ 寿司金 しげ (380) さんの口コミを引用しています。

http://tabelog.com/kanagawa/A1402/A140208/14020379/dtlrvwlst/3410089/ )
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①酸っぱいものが欲しいと漠然と注文し、お寿司屋さんはそれに応えています。
お客様を見て、良いと思う寿司を出しているのです。
これが当たっています。
②次に、大将がお客様に話しかけ、いろいろと興味深い話をしています。(知識のひけらかしにならないように気を付けないといけませんが、)
③その後、注文がないのに、大将がこのお客様に合うと思う寿司を勝手に提供しています。
それも、当たっています。
④食べていただき、見繕いの良さ、美味しさを確認していただいています。
ちょっと予想よりも高くなってしまったようですが、満足感は高かったようです。

セレクトショップと同じ流れです。
こちらでは、お客様に提案する前に、お客様との会話を持っていることが分かります。
セレクトショップでも、会話があったはずです。

3)これらの専門店の接客の流れは、
①まず、お客様の要望をよく聞いてそれに応える。この時お客様をよく観察する。
②お客様と会話をして、信頼感を築き上げる。
③お客様の意図や希望を察する。
④その上で、こちらからお客様に合うと思うものを提案する。
⑤満足できるか確認していただく。
なのです。

 

4.これらを実際に行うためには、

・お客様にいろいろ話していただくために、一瞬でこの人になら話しても良いと思われること
・〇〇になりたい、〇〇と思われたいなどのお客様のご本人でも意識していないようなの意図や気持ちを察すること
・提案を受け止めてもらうために、信頼できると思われること
が必要です。

話してよいと思われるためには、この人は私の話をよく聞いてくれていると感じていただくことです。また、よく聞いていもらっていると思われると、信頼してくれるようにもなります。

「良い聞く態度」を作ることがポイントです。

また、察する力が必要です。
お客様の言葉以外、話していることのもとにあるものを感じ取ることが求められています。

 

 

5.どうやって身に着けるのか?

1)「良い聞く態度」は、相手に興味を持つこととインナーワークを止めることで手に入れられます。
相手に興味を持つということは、純粋にその人自身に興味を持つことで、批判や評価など一切しません。単純に、興味を持つのです。

お客様と会話をしているとき、「在庫あったかな?」「このお客さん話し長そうだな」「買う気あんのかな?」「またか、こういうお客さん多いんだよね」などといろいろ頭の中で考えています。

この頭の中で話している独り言を、インナーワークといい、これがお客様からみて店員さんが話を聞いていないと感じさせる原因になっています。

これを止めます。剣道で言うとところの、「無になる」ということです。
最初は難しいので、お客様が話していることを頭の中でイメージするようにすると、独り言が減っていきます。
また、インナーワークをなくすのは、最初の5分で十分です。
長時間していることは難しいですし、最初の1分で、お客様はこの店員さんはいい人かそうでないかを決めてしまいます。

 

2)「 察する力 」 を高めるためには、まずは、観察することです。
服装や持ち物、歩き方や話し方でも、ある程度察しが付きますが、しぐさが一番わかりやすいと思います

・足なら、お客様は気に入っていれば、こちら方に足が向いているはずです。
・もし興味や関心を持ってくれているのなら、瞳孔が大きくなり、パッと明るい表情になっています。
・また、あまりこちらを見てくれないようであれば、嫌われているか緊張しているのかもしれません。
・鼻や口を頻繁に触っていたら、何か言いにくい事があるのか、自分の本音を隠しているのかもしれません。
・耳を触っていたら、会話に飽きているか、もっと聞きたいかのどちらかです。これは、他のしぐさからどちらかを判断します。
・たとえば、足がこちらに向いていて耳を触っているのであれば、もっと話を聞きたいはずです。
・また、箸やおしぼりなど手近な物を触ったり回していたりしていたら、話を切りたいか、他の話をしてほしいか、なにか不満があります。
・まばたきが多ければ、不安であったり緊張していたりしています。逆にまばたきが少なく、目が上を向いていたら、何かを考えたり、思い出していたり、悩んでいるはずです。

しぐさを観察して、お客様がどんな気持ちでいるのかを察することから始めるのが、良いと思います。

察する力がついてくると、はじめてお店に黙ってはいってきたお客様に、話しかけるタイミングやどのようなことを話せばいいのかが分かるようになってきます。
はじめてお店に黙ってはいってきたお客様の、微妙な空気が読めるようになるということです。

 

 

6.私たちもお客様に見抜かれているからこそ

1)このことは、私たちに言えることです
無意識に、お客様への気持ちは出ています。お客様に読まれてしまっています。

最高の接客は、マナー(礼儀)がよく、フレンドリー(共感)で、ナビゲーション(誘導、解説)が素晴らしいものだといいます。
マナーやナビゲーションは練習すれば身に付きます。
しかし、フレンドリーさは、そうはいきません。
これがなくマナーが良いと、慇懃無礼になってしまいかねません。

自分の気持ちはしぐさにでており、しぐさは無意識で行っているのでコントロールできません。
人の行動の9割は無意識で行っているといわれています。
マナーは残りの1割をコントロールしているにすぎないのです。

2)フレンドリーさを身に着けるには、気持ちをオープンにすることが必要です
オープンにするには、多少のことを言われても平気と思える自信が必要です。
そのためには、自分のちょっとした小さな成功に目を向けることです。
挨拶ができた、お客様と話せた、笑っていただけたなどでも構いません。
目標を決めて、達成できたら自分を褒めてあげます。
帰りに食事をしていくのもいいと思います。

たとえば、笑顔だけでも、笑顔で挨拶したらお客様からも笑顔が返ってくるようになったら一人前です。

「あぁ、気持ちがいいあいさができたなぁ…」と思えるのは、
「お客様が笑顔であいさつを返してくれた時」や「お客様が目を見てあいさつを返してくれた時」です。

3)オープンな気持ちとともに、お客様に好意を持つことができれば最高です

ひとは、好意を抱かれると自分も好意をもつという習性をもっています。
※自分のことを肯定的におもっているひとは好意をもつと向こうも好意をもってくれますが、自分のことを否定的に思っているひとはそうではありません。

お客様は、認められたい、高く評価されたいと思っています。
理屈抜きで、自分に好意をもってくれていたら悪い気はしません。
ですから、自分を認めてくれる店員さんを好きになるのです。(嘘は見抜かれます)

これらが身に付くと、
お客様がリピートしてくれ、「こういう服ないの?」「こんな料理作ってくれる?」「あのお店になったようなのは無いの?」と、気軽にわがままを言ってくるようになります。デパートや高級店などのカチッとした接客では身に着けられない態度です。

 

 

専門性が高くて品揃えが良いほどお客様は満足してくれると思いますが、逆です。専門性が高くて品揃えが良いほど、わけがわからなくなり自信をもって選べなくなります。お店の人に頼らないとならなくなるのです。頼る分、自分のことを理解してもらいたくなります。そうでないと、本当に欲しいものが手に入らないからです。つまり、専門性が高くて品揃えが良いほど、高いコミュニケーション力が必要になってきてしまうのです。専門店は大変なのです。

 


工藤 英一

About 工藤 英一

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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