世界一・常連客1000人以上 ビッグイシューのカリスマ販売員がしてたこと! その2トップ販売員編

 一番売っている場所はどこだとおもいますか?実は、乗降客が多い駅ではなく、少ない駅なのです。関西なら「川西能勢口駅(大阪郊外の乗降客5万人ほどの小さな駅)」、次が「高槻駅」「京阪葛葉駅」。関東なら、JR山手線で3番目に乗降客数が少ない「目白駅」なのです。乗降客数と販売数は比例していません。販売数は売るひとによっているんです。

 

1.五反田と田町駅でビッグイシューを販売をする田中さん

1)サラリーマンより良い収入
田中さんは、今まで最高で月の売上数が1500冊程度(ビッグイシュー販売者の平均で1号300冊程度)。単行本の売上も、「人生レシピ」が458冊、「ビッグイシューの挑戦」も342冊。本屋よりも全然売ります。

2)仕事に対しては「命がけで全力投球してやる」という超まじめな態度

「若い人は、これは一生の仕事やないかもしれん。でも、これを今やっている限りは、命をかけてやって欲しい。仕事っていうのは、そういうものでしょ。別に、10冊なら10冊でええねん、10冊売る。10冊売ったら、明日は11冊。決めたら、絶対売れるまで立つ。買わない人ほど、よく見てんねん。ビッグイシューに全力投球していないから、売れないんだと思いますよ。」

3)「出来ません」「ありません」は言わない
目標としているサービスレベルは、まるで、リッツ・カールトンやディズニーランドのようです。

「私はね、お客さんに出来ません、ありませんって、極力言いたくないんです。「ビッグイシューの挑戦」という本は、事務所の在庫がなくなってしまったので、本屋で15冊買って持ってます。儲けはなしです。お客さんに欲しいっていう方がいる以上、定価で買ってでも持っておきたい。持っておくのが、サービスと思ってますから。そうやって、本屋には多くて10冊しかない本を一人で342冊売ったわけや。もう、本屋に置かんで、全部こっちまわせって。」

4)徹底的にお客様主義
届けてくれと頼まれたら、どんなに大変でも歩いて届けに行く。

「それはもう、記念すべき一番最初のお客さんやから。その人から始まったんや、その人がなければ、今の自分はないねん。だから、毎号初日にな、歩いて届けに行きます。届けることなんて、何でもないねん。配達すれば、確実に1冊売れます。だから、他にも何件か届けてますが、お届けしてくれって言われたら、「はい、喜んで」って言いますね。」

5)4つの心得
田中さんの心得は、どれも当たり前のことですが、当たり前のことをキチンとやり遂げるということが実践されています。

・ユニフォームは、きちんと必ず身につける
「この帽子、着ているTシャツもそうです。これは、ユニフォームやから基本の「き」でしょ。でも、あんまり言わんとこと思ってるけど、他の販売者、着てないでしょ。私はビッグイシューの販売者です、怪しいもんとちがいますって、こうやって帽子やTシャツを着るわけです。そうしてはじめて、お客様もビッグイシュー販売者やなって安心して買えるわけです。」
・新号はすみからすみまで全部読む
「これは、お客さんに言われて読むようになったんです。「君、商品について知っとるか?知らへんのに売っとんのか?」って。そんで、読むようになったんです。読んだら、ホントにこれ内容いい本やから、必ず間違いないからってお客さんに勧めることできるようになった。必ず全部読むこと。これは鉄則です。」
・朝は「おはよう」、昼は「こんにちは」、夜は「お疲れさま」と挨拶する
「 いつも、きちんと挨拶されたら気持ちいいでしょ。毎日駅を何万人も通るけど、ほとんどの人は素通りです。でも、素通りする人にこそ、きちんと挨拶する。そしたら、いつか買ってくれるようになる、そういうもんです。」
・時間を守る
「毎日、夜10時まで立つって決めたら10時まで立つんです。休んでいいのは雨のときだけです。何が何でも立つ。何曜日は何時までいますって言ったら、おらんとあかんのですよ。約束は守らんといかん。商売は何でもそうでしょ。」

6)常連の数
常連の客数は約800名、内、顔と名前が一致するのは300名です。お正月には、常連さん800人に、紐をつけた5円玉を配っています。かなりの数で、普通のお店なら大繁盛店です!
単価6000~7000円の街のイタリアンで考えると、売上1億5000万円のものすごいお店に匹敵します。普通のお店で5000万円程度の売上ですので。

7)できる限り情報を集め常連客を覚える
お得意様の名前を覚えるために、お客様の特徴や会話などを、すぐにメモしています。
例えば、女性のお客様だったら、女性で、オシャレで、すらっとしていて、背が高くて、スタイルが良い、、、など。
印象をメモした上で、その後も3回ぐらい雑誌を買いに来てくれて信頼関係ができてきたら、名前を聞いて、メモに書き加えています。
たとえば、子連れで買いに来たときには会話の機会をつかんで、出来るだけお客様と世間話をして情報を集めます。
子供などの家族構成や住んでいる場所、趣味や出産予定なども聞き出して、出来る限りお客様の情報を細かく集めていっています。

8)ノートへ詳しく書き込み貯めていく
お客様を覚えると共に、売り方の戦略を練るのに使っています。お店で言えば、営業日誌ですね。
1ページ(日付記入)を1日にし、縦軸に時間を入れ、全体を左右上下に分けています。上に常連のお客様、下に新規のお客様を記入し、左がお客様の属性、右が売り上げ冊数にしています。
さらに、、売上冊数を分類していきます。まず、新号とバックナンバーに区別し、次に、赤と黒で正の字を書いて男性と女性の売上冊数量を記録しています。

これだけ記録していると、
・お客様は女性がずっと多いこと
・月初めは新号が売れ、後半になるとだんだんバックナンバーが売れるようになってくること
などが分かり、月後半はバックナンバーを揃えていると売上げ伸びると分かるようになります。

9)一瞬でお客さんを巻き込む方法
買おうかどうか迷っているお客さんに上手く勧める技を持っています。まず、ただみているのか買おうと思っているのかを見抜き、買おうと思っているひとだけに話しかけます。迷っているひとは、あえて無視します。

かなりの高等技ですね。アパレル店のトップセールス以上の腕を持っているかもしれません。

「まずは、特集の説明をします。今回は森の特集です。こんな記事載ってます。それから、表紙は、戸田恵子です。日本人の号はまだまだ少ないので珍しいです。そうやって、お勧めします。ジョニーデップだったら、ジョニー・デップは7回出てます。売れ筋なので、すぐ売り切れになりますよ、早めにお買いになった方がいいですよ!とか。その時その時の話題を短く言います。」

「素通りする人には言わへん。買おうかなと思ってる人だけや。買うそぶりは、分かるんです。買う買わないは99%分かります。自信あります。小銭用意しようとしたりとかね。逆に、迷っているな~と思ったら、知らん顔して目をそらす。そうすると、すーっと引き付けられます。買ってくれ~って見たら、逆に買いにくいじゃないですか。逃げてしまう。だから、知らん顔して、「あなたが買ってくれても、買ってくれなくても、私にはどちらでもいいんですよ」という顔をしていると、買いやすくなるんですね。」

10)売上げが落ち込んだときにすること
目標を年間からブレイクダウンして1日の目標を立て、目標達成にこだわる点は、大企業顔負けです。また、普通に売れており目標達成のために頑張っている演出をし、上手く常連客を巻き込むとこなどは、秀逸です。

「売上げが悪いときは、まず長く立ちます。22時で終わろうかなと思ったところを23時まで立つとか。私は年間目標、月目標があって、そこから一日の目標があるので、今日は60冊って決めたら60冊売るまで頑張るんです。」

「だから、常連さんが通ったらあと2冊で目標いきます、買ったってください。とかは、言いますね。「ほんまに、助かります。これで、目標いけます。おおきに、おおきに」って。お客さんも、ちょっと嬉しいわけや。常連さんやから、売れてるときよりは、困ってるときに買ってあげたいっていう気持ちもあるでしょ。恩を売るのではなく、恩を売らせるっちゅうこっちゃ。」

「でも、いつも無理頼んだら「あいつ何や」ってなるからな、ホントに売れてないときは、「いや、ぼちぼち売れてます。おおきに」って。「売れてる」って言います。売れてないとこから、買いたくないでしょ。逆に、余計売れてるときは、「いやー、あんまり売れてませんよ」って、逆のことを言いますね。すごい儲かってるとこからも、買いたくないでしょ。とにかく、悲壮感はみせません。」

11)常連のお客様の声
田中さんはテクニックをいろいろ使っていますが、どうやら、頑張っている姿勢がお客様に元気を与えているようで、これが一番集客効果を上げているのではないでしょうか。そのため、決まったときに決まった場所にいるということがとても重要になってきています。

「田中さんは、関西弁で、「おはようございます~」「こんにちは~」「おおきに~」って、大きな声で声をかけてくれるんですね。そんな風に元気に挨拶されたら嬉しいじゃないですか。むしろ、こっちが元気もらってるっていうか。田中さんに会うと、僕自身が頑張ろうと思うんですよ。あと、必ずこの時間に、あそこにいるということも大事です。いつも、決まったときにいるから、木、金になればTさんに会えるし、それまで待とうって。他の販売者さんから買おうって気にならないんですよ。」

 

 

2.仙台駅から徒歩3分程のところ、アーケード街の入り口近くで販売する橋本さん

仙台橋本さん

 

橋本さん(60歳)は、JR仙台駅から徒歩3分のアーケード街の入り口で販売しています。2007年8月から初め、2008年4月で5千冊、2009年1月には1万冊に達成しました。

1)メモを橋本流で毎日記載している
買ってくれた号数・時間・性別・見た目の年齢・話した話題などを、独自の記号を使い毎日ノートに書き込んでいます。
1年もメモを書いてくると、お客様の行動にパターンがあることが分かってきます。
とえば、新号を発売するときにはその前の号が売れると言うパターンが見えてきます。
そのため、新語発売時には、前号を最低20冊確保するようにしています。
また、多くの人と接していると買ってくれるかどうか予想できるようになっています。
近くを歩いているひとが買ってくれるかどうか、なんとなく分かるようです。特に女性は、8割から9割方、買う、買わないがわかるようになってきています。

2)バックナンバーを売り込むために、雑誌を読み込んでおく
新刊も売りますが、バックナンバーも接客的に売り込んでいます。
そのために、最新号はもとより、バックナンバーも熟読し、うまくお勧めできるようにしたり質問にも即答できるにしています。
内容を覚える記憶力はすごく、学生のボランティアも舌を巻くほどです。

3)毎日同じところに同じ時間立ち続ける
立っているところは、仙台でも歩行者の通行量が1,2位を争うほど多いところです。
ビジネスマン、通学する学生、買い物客などで朝からごったがえしています。
橋本さんは、台風でもないかがいり、ここに午前8時から午後5時まで、必ず立つようにしています。

「自分に負けない気持ちさえあれば必ず一定の売り上げはある」と橋本さんは言います。

4)逃げずにとにかく正面からしっかりとお客様の顔を見て対応する
「正面から相手の顔を見て、ハッキリと話す」と、誠実感や頑張っている感、自分のために一生懸命に話してくれているというが感覚が出てきます。目が合った瞬間に「買ってくれるかどうかがわかる」そうです。

「逃げずにとにかく正面から、しっかりとお客様の顔を見て対応する。聞こえるように言葉をハッキリと発する。発するタイミングは信号待ちの人々が(車の信号が黄色になって)動きだす直前。目と目が合った時が勝負」

また、迷っているひとには継続的に声を掛けます。ちらり、ちらりと見ては前を素通りするだけの若い男性に見る度に声を投げかけ続けていたら、数週間後購入してくれ、バックナンバーをすべて購入するほどの顧客になってくれました。

5)1ヶ月単位で出来るだけ売り、それを続けることを目標にしている
1日の売上最高記録も狙えるのですが、目標にはしていません。月の売上とその継続を目標としています。

「一日だけたくさん売ったことより、一ヶ月でどれ位売り上げることができるか、そしてそれを何ヶ月キープできるか」

ビッグイシューを販売して6ヶ月で、定期的に買ってくれる常連さんが約100名できました。常連のお客様の約7割は女性で、手づくりの名刺やおせち料理を差し入れてくれる大ファンも少なくありません。

 

 

3.早稲田で販売している尾藤さん
尾藤さん(56歳)は、早稲田で売っています。学生さんが多く買ってくれるのは良いのですが、せっかく常連さんが増えてきて売り上げが安定してきても、卒業して来なくなってしまいます。そんな場所でも、同じ場所に立ち続けることが重要になっています。

1)尾藤さんのモットーは同じ場所に立ち続けること
お客さんの多くが学生さんなので、夏や冬の休みや試験などで売り上げが左右されます。普通、夏や冬の休みや試験時期には、売場を変えれば良いと思うのですが、動くことはしません。

「朝8時から夜6時まで、早稲田駅近くに立つようにしています。暑い日も寒い日も、売れる時も売れない時も……それが一番大切なこと。行きがけに『買おうか、どうしようか』と迷っていた本を、帰りがけにやっぱり買ったっていう経験、誰にでもあるでしょう。私たちの仕事は、街の本屋さんと同じ。いつも同じ場所で決まった時間に開いていないといけない」

2)新号はしっかり読み込み、自前のポスターを作ったりアンケートを取るなど工夫をし続ける
新しい号が出たら、端から端までしっかり読みこんでいます。

「中身がわからない商品を売れないからねぇ。どんな内容の号なのか、お客さんに聞かれても説明できるようにしっかり読むようにしていますよ」

3)常連の学生さんから、さまざまな相談を受けることもある
学生さんから、人生相談を受けることも少なくないようです。学生さんも、失敗し続けてきても、なお頑張っているひとの話は

聞く価値があると思うのですね。
「今は大変な時代。大学を出ていてもいつリストラに遭うか、会社が倒産するかわからないからね。将来を不安に思う学生さんも多い。いろんな仕事を転々として、失敗を重ねて、ようやくわかったのは、楽な仕事なんてないってこと。だから、どんなことでも全力でやるのが一番だと思うんですよ」

 

 

この3人のやっていることをまとめると、
・同じ場所に決まった時間必ず立つ
・元気に挨拶をする
・お客様の要望には可能な限り対応し、そのための準備もおこなっておく
・雑誌は新号もバックナンバーも読み込んでおく
・お客様と会話し、お客様のことや売れ行きを細かくメモに書き込んで貯める
ことをおこなっています。

さらに、販売場所が観光地の場合には、販売員は、地図を自分のお金で買って、観光地などを覚え、道を聞いてくる方に丁寧に教えています。雑誌を買う買わないに関わらず、丁寧に教えているんです。

 

これらのトップ販売員さんは、
・いつも同じ場所に同じ時間にいることで、周囲のひとにいつも感や安心感を振りまいています。
・また、元気な挨拶をすることで、元気を周囲に振りまいています。
・その上で、お客様ひとりひとりのことについてできる限り知り、要望は断らず、できうる限り対応することをおこなっています。まるで、リッツ・カールトンやノードストロームのサービスです。

 

元工場や建築現場で日雇いで働いていた方が、こんなにもレベルの高い接客をしているんです。
もしかしたら、リッツ・カールトンやノードストロームのやっているサービスって、やる気になれば誰にでも出来るのではないでしょうか?

ところで、ビッグイシューの販売員さんには、「立ち姿だけで、田中さん以上、世界一の月に1700冊も売るカリスマ販売員さん」がいたことをご存じでしょうか?その販売員さんは、10万冊を売ってビッグイシューを卒業し、今は清掃会社に勤めています。

「世界一常連客1000人以上ビッグイシュートップ販売員がしてたこと! その3カリスマトップ販売員編」はこちら

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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