ミッション・ビジョン・バリュー(理念)はどのようにして作れば良いのでしょうか?

 

■ALL ABOUT PROFILE Q&Aより
一番下に回答が掲載されています: http://profile.allabout.co.jp/ask/q-113908/

自社の、ミッション(社会における役割・存在意義)、ビジョン(3年後に目指す姿)、バリュー(経営陣・従業員全員が共有し大切にする考え方)は、自社で作るものです。

しかし、ミッション、ビジョン、バリューを作るとき、役員と企画部だけで作ることはできません。役員、社員、お客様全員から意見や感想や評価をいただかないと、本当に自社のあるべき姿が見えてこないからです。

 

1.丸善の歴史

明治2年創業

創業時の社名は「丸屋商社」その登記簿に、代表者として「丸屋善八」という架空の人物を記載したことから丸善の名が生まれることになった。創業者は福澤諭吉の門人・早矢仕有的(はやしゆうてき)である。設立当初から、世襲が基本だった当時の商習慣を廃し、所有と経営を分離するなど、事実上日本初の近代的会社として知られる。丸善は近代日本における西洋の文化・学術紹介に貢献し、その紹介する商品によって培われた気風は「丸善文化」と呼ばれ、多くの文化人に愛された。また、書店のみならず、学術情報から服飾・高級文具・建築まで幅広く手がけており、創業時よりの商社的性質が現在も残る。

1990年代、丸善の経営が悪化、1999年、プリンストン債事件に巻き込まれ、56億円もの多額の特別損失を計上。
2005年8月3日、産業再生法に基づく事業再構築計画が認定され、大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツから1000億円の出資を受け再構築計画を実施。
2007年8月3日、大日本印刷の子会社となる。
2009年9月、丸善株式会社、株式会社図書館流通センター、株式会社ジュンク堂書店の3社が経営統合を公表。
2011年2月、ジュンク堂書店と丸善書店が丸善CHIホールディングス株式会社の子会社となる。
<wikipedia より>

 

2007年から2008年にかけ、知的資本経営報告書(非公開) を作成し、その中で自社の、ミッション、ビジョン、バリューを作り上げています。

この過程を、是非、見ていただきたいと思います。

明治2年創業、日本の教授たちに本(知識)を提供し続けてきた会社が、多角化し、赤字化していき、方向を見失ってしまい、つぶれる寸前までに来たときに、なんとかぎりぎりで作り上げた理念です。

 

2.理念の作成

・全従業員にアンケート配布。業務の合間を縫って返信されたアンケートは3005 通。
・役員全員が時間を惜しまずすべてのアンケートと、従業員ディスカッション参加者が作成した模造紙を見る。
・役員は一つ一つの言葉を重視し従業員がどのような思いをもっているかを把握する。
・役員全員が、心に響いた言葉を選び抜き、「丸善」を表現し、発表し合い、議論を重ねていく。
・出来上がった新しい経営理念を、背景や考え方とともに小冊子にまとめる。
・日比谷公会堂で新経営理念を発表する。
・発表の場で、全員で冊子の内容を確認し、自筆でサインする。
・経営理念は会議室、オフィスフロアなど丸善社内の様々な場所に掲げ、社内外の人々の目に触れるようにする。

 

3.戦略策定

1)経営陣・従業員をはじめ、顧客・取引先などの200名以上のお客様や仕入れ先、協力業者などの関係者に、自社の評価をしてもらう(人的資本、組織資本、関係資本を評価)。

2)見える化
・「丸善ならではの強みや課題」をIC Rating®という方法で、構造的に“見える化”する。
・3000名の従業員からの回答を得て、個別の組織単位の活性度合を“見える化”する。

3)議論の下地作り
これらの結果を経営陣と事業部幹部とで共有し議論を重ねることで、丸善本来の価値源泉である知的資本や各事業の現状の実力に対する感度を揃え、議論の下地を作ります。

可視化されたIC Rating®の結果(スコアとステークホルダーのコメント)をもとに「自社のありのままの姿」を直視し、丸善の発展に向け真に必要な取り組みを議論するために、経営陣と事業部幹部によるワークショップを重ねています。

ワークショップでは、
①丸善が磨くべき真の価値源泉(知的資本)の共通認識を醸成、
②価値源泉の共通認識に基づく事業ビジョンを構築、
③事業ビジョン実現のための成功要因(戦略ストーリー)を明確化し、
各事業部の戦略を策定しました。

4)個人の行動計画作成
経営陣と事業部幹部で策定した戦略は、現場で議論し実効性の高い戦略に練り上げる。
この過程で、全社・事業部の目指す姿が従業員に共有されました。
支店・店舗の従業員は、戦略に沿って自身の行動計画を立案しています。
描かれた計画実現シナリオは毎月一度、検証(計画通りに出来たか、出来なかった場合の原因は何かなどを議論し、都度、軌道修正を行うことによって計画⇒行動⇒検証する)されています。

※上層部が勝手に作ったKPI(業務先行指標)に現場が振り回され現場は疲弊していたが、この方法により、納得度の高いKPIを設定することができました。また、現場における個々の知的資本の強化度合がモニタリングできるようになっています。

丸善が持続的な成長を続けていくためには、「知的資本経営」の取り組みをステークホルダー(取引先、顧客、株主・投資家、従業員、地域社会など)に評価していただくことが重要と考え、取り組みのレポーティングを開始。初年度の2008 年版では各事業のビジョン、事業の歩みや外部環境、知的資本の状態、事業成長に向けた方針をご紹介しています。

 

4.お客様の声の例

「昔の営業マンは、図書カード一枚で2時間も話せた。一枚の図書カードを皮切りに、そこから話題が広がっていくんだ。そこには知性の世界が広がっていた。その時間はとても楽しいものだったね」       (大学経営層)

「昔はやはり文化を売っていますというプライドを持っていた。学問のジャンルごとの風が、営業が来ると感じられた。扉が開いた瞬間にその風を感じさせてくれる人がいた」 (大学経営層)

「丸善はものすごい量の貴重なコンテンツを持っている。例えば、マイクロフィルムはものすごいものを持っている。丸善は一橋大学のメンガー文庫をすべてマイクロにした。国立国会図書館の明治期の書類もマイクロにした。あれほどのコンテンツを丸善の内部だけに眠らせているのはもったいない」 (有識者)

「丸善の強みは、丸善という組織が持つ総合情報ですよね。丸善の持つ情報には広がりと奥行きがあって、図書館員にとっても図書館以外の情報が手に入るととても嬉しい。他大学の動向とか、文科省の動きとか、海外の動向とかね。そのような情報をひっくるめて、大学に関わる総合情報をお客さんに提供して、その上で商売を築けているのが丸善の最大の強みではないかな」 (大学図書館経営層)

 

5.工程のまとめ

全従業員(3005名)、お客様(大学教授など)、取引先などにアンケートやヒアリングを行っています。社員には、自社についてどう思っているのか(良いところや不満など)をアンケートで調査し、お客様には、自社の営業マンや自社の強みや感想などを集めて回ったのです。

そして、自社を評価する項目を出し、一つずつ、自社内で評価点をつけ、さらに、お客様にも評価点をいただています。この2つの点を比べると、社員とお客様とで評価が異なっている項目が見えてきます。

アンケート、ヒアリング結果、評価が異なっている点を見ながら、自社の強みはどこか、どの方向に進めばいいのかを考えていったのです。その上で、ミッション、ビジョン、バリュー、そして行動規範を作り出しています。

 

 

6.理念

1)丸善ミッション(社会における役割・存在意義)  「知を鐙す   丸善」
2)丸善のビジョン(3年後に目指す姿)        「もう一度、丸善になる」
3)丸善の価値観(バリュー:経営陣・従業員全員が共有し大切にする考え方)
「知に生き、人間を信じる」
4)丸善の行動規範(経営陣・従業員全員が日常取るべき行動)
・本質、本筋、本物を読め。知性は姿に現れる。
・現場、現実、現物に迫れ。お客様は目の前にいる。
・感謝と笑顔を忘れない。どれだけ人を思いやれるか。
・挑戦者たれ。人のためにも拓くべき未来がある。
・あたり前の作法を全力で行え。気品が人をつくる。
・正直に。透明に。自信をもって清潔に生きる。
・強き精神でやり切れ。誇りある自分を築く。

 

 

ビジョンの「もう一度丸善になる」というのは、
3年後には、お客様が良いともっていた姿、昔、丸善が知や文化を運んでいた忘れていた本来の姿に戻るという意味です。このあるべき姿を思い出させてくれたのはお客様です。
お客様に聞いたからこそ、思い出すことが出来たわけです。

自社のミッション・ビジョン・バリュー(理念)を考えるのに、お客様の声はなくてはならないものなのではないでしょうか。

 

 

 

 

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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