新商品開発 第1章1)他人が欲しがるものが新商品

私たちがつくるべき新商品とは、「すごい商品ではなく、必ず売れる商品」でなければなりません。例えば「常連の田中さんが飛びついて欲しがるのはどのような商品なのか?」これを考え抜くことが、新商品開発の第1歩ではないでしょうか。

 

第1章新商品開発の非常識

1)他人が欲しがるものが新商品

■人気メニューの作り方
私の両親は、2人ともお店や会社を経営していて、常に新商品の開発を行ってきました。

 

母は、東京の六本木、渋谷、祐天寺という飲食店激戦区でお店を開いていました。

どれも繁盛店にできていたのですが、その秘密は独自の「新メニューの開発方法」にありました。

・まず、旅先などで美味しい料理があれば厨房にまで行って作り方を教えてもらってしまいます。
・そして、自分のお店で自分風に作ってみて常連さんに出してみます。常連さんが美味しいと言ったら第一段階クリアです。
・後日、その常連さんが来たときに、黙っていてもその料理を頼んでくれたら合格です。

そうして初めて新しい料理がメニューに載るのです。

ですから、メニューは、人気の料理ばかりになっていくのです。

 

■53歳で趣味が高じて世界初の新商品を開発して2億円

父の場合には、趣味がこうじて、ダイビングで海の中で写真が撮れる一眼レフカメラ用の防水のケースを日本で初めて作ったのです。

それまでは、ニコノスという目測で大まかにしかピントを合わせられなかった防水されたカメラがあるだけで、まったく良い写真が撮れませんでした。

それを不満に思っていた父は、ついに、陸上で使っている、カメラをのぞきながら自分で正確にピントを合わせられる一眼レフカメラの水中用のハウジングを世界で初めて作ってしまったのです。

もちろん、簡単には開発できませんでした。
普通のプラスチック用の接着剤を使った接着では、水圧に耐えられず水中で剥がれてしまうのです。

最後は、プラスチック(アクリル)の研究をしている東大の先生を見つけ出し、無理矢理押しかけて重合接着という特殊な接着方法を教えていただいたのです。

これによって、水深30m以上、普通のダイビングなら十分に耐えるハウジングが作れるようになったのです。

すると、ダイビング仲間から「自分のも作って欲しい」と頼まれることが多くなったのです。

そこで、会社を作ってしまいました。

その後、売上は2億円、日本はもちろんハワイまでにもハウジングを売っている会社にまで成長しました。

 

もちろん、失敗もありました。

使い捨てカメラ用のハウジングを開発したのですが、すぐに大手のカメラメーカーに真似をされ、大損したのです。

 

■素人の強み

私の場合には、水中撮影が下手で、どうやっても上手く撮れずに不満だらけでした。

そんな時、ちょうど小型のデジタルカメラが初めて世の中に出てきたのです。

「デジタルカメラなら、写真を撮った後からでも修正できる!」 そう思った私は、デジタルカメラ用のハウジングを開発しようと思ったのです。

※自分のために開発するようなものです。

しかし、当時は、小型カメラと言えばAPSカメラが全盛でした。

一方デジタルカメラはといえば36万画素で7万円もし、画質も悪くばかみたいに高い。

誰も普及するとは思っていませんでした。

そのため、「デジタルカメラのハウジングを開発する」というと、社員全員が反対し、動けなくなってしまったのです。

そこで、東京の神田にある叔父の会社に机をひとつもらい、ひとり開発部として会社には内緒で新商品の開発を始めたのです。

もちろん費用は自腹です。

ビックカメラで3Dで設計できるソフトを買い、自分でパソコンで設計し、それをなるべく安くやってくれる3軸の研削マシンを持っている工場にお願いしました。

工場は、東京都板橋区産業振興公社に行き、紹介していただきました。

紹介していただいた工場に設計図を持って試作をお願いしにいったのですが、最初は、足下を見られ1個25万円も取られたのです。

しばらくすると開発していることが会社にばれ、会社をクビになってしまいました。

それでも開発はやめず、さらに、特殊な防水パッキングを提供してくれる工場も見つけ出し、1年かけてやっと最初のハウジングを作り上げたのです。

できあがると、会社が「持ってこい」といい、もって行って試作品をみせると「これはうちで販売する」というのです。

勝手なモノです。そして、私も試作品と共に会社に戻ったのです。

 

戻ると、今度は、販路の開拓です。

まず、デジタルカメラ用ハウジングなので、WEBで販売するのが良いだろうと単純に考えました。

そこで、win&win.netの小宮mさんに、会社のWEB店の店長(運営)をお願いして、WEB販売を始めたのです。

初月から500万円、次月も600万円もの売上があり、込山さんもビックリしていたのを思い出します。※2000年当時、インターネット通販は現在の約1/10しかありませんでした。

その後、マイカルや大手のダイビングショップから申し込みが相次ぎ、販売ルートを広げていきました。※それと共にクレームも多くなりました、、、。

さらに、ダイビングの展示会で出展することで、おかげさまで新商品はヒットし、会社のお客様数は3倍、売上は2倍になったのです。

 

もちろん失敗もありました。

ハウジングを貸す事業を企画したのですが、水漏れクレームが多くなると社内中の強い反対にあい、敢えなく諦めてしまったのです。

更に、骨伝導を使った水中通話機も開発しようとしたのですが、技術協力してくれるところが見つけられず自然消滅してしまいました。

DIV ハウジング

※なかゆくいさんより引用 http://www4.plala.or.jp/campbelli/camera.htm

 

■新商品は作る前から欲しがる人が決まっていた

振り返ってみると、新商品の開発が上手くいったのは、常連さんや友人、それに素人の自分というお客さん、最初から開発した新商品を欲しがる人が決まっていたからだと思えます。

自分自身も含め、「買いたい」という人のために新商品を作っていたようなものなのです。

私たちが目指すべき新商品の開発とは、
「すごい商品を開発することではなく、必ず売れる商品を作ること」
だと思います。

「○○さんが飛びついて欲しがるのはどのような商品なのか?」 
これを考え抜き、見つけることが、新商品開発の第1歩だと思います。

 


全国商工会議所用小冊子WEB版 「新商品新サービス開発&販路開拓」   目次
第1章 新商品開発の非常識
1)他人が欲しがるものが新商品
2)スティーブジョブスのすごい妄想力?
3)買って使って感動してまでが新商品開発です
4)本当に良い新製品を開発できたと思ったらアメリカで売りましょう
5)新商品のこえるべき3つの絶壁
6)いくら宣伝しても「売れない商品」は売れません
第2章 新商品の販路を切り拓く
1)9つの販路開拓成功物語
2)販路開拓の基本のキ
3)バイヤーに会う方法と小売店に直接売り込む方法
4)東急ハンズとロフトのバイヤーへの売り込み方
5)バイヤーは常にヒットの芽を探しています
6)ヒットするのはバイヤー目線よりお客様目線
第3章 新商品のコンセプトを作る10の方法
1)トレンドを無視してヒット商品はつくれない
2)新商品を開発するときの3つ基本戦略
3)不満・悩みから新商品を考える方法
4)ヒット商品から新商品を考える方法
5)他人のアイディアから新商品を考える方法
6)「変わった使い方をしている方」を見つけて新商品を考える方法
7)ヒットのパターン例から新商品を考える方法
8)オズボーンのチェックリストを使って新商品を考える方法
9)新サービスのコンセプトの作り方
10)キーワードから新サービスを考える
11)最も強力な新商品の開発方法 「すべて真似る」
第4章 すごい製品を開発する
1)新商品開発でどのコア技術を磨けば良いのでしょうか?
2)定食屋さんやケーキ屋さんの新商品開発のコツ
3)常連さんを増やすことをダイレクトに狙った新商品の開発方法
4)新サービス開発を成功させる要
5)ヒットメーカーはすごい技術を外から持ってくる
第5章 すごい製品をヒット商品に仕上げる
1)製品を売れる商品に作り込んでいく
2)90点になるまで絶対にあきらめない
3)新商品のネーミングと隠喩
4)短時間で簡単に誰でも良いデザインを作る方法
5)新商品に高い信頼性をつける
6)正しいお客様をとことん楽しませ話題を作ります

 

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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