無自覚学習(2011年学会論文より) 

<自覚のない学習について>

閾下プライミングを用いた洞察問題解決における潜在システムの分析
An analysis of the Implicit system in Insight ProblemSolving by Subliminal Priming
鈴木 宏昭,福田 玄明, 熊澤 修
→ 論文:JCSS2011_O4-2 よりダウンロードできます。

上記の2011年の日本認知科学会で出された研究報告から、自分では自覚していないのに覚えてしまい、それにより直観的に問題が解けるようになる可能性が示されています。

昔からあるサブリミナル効果のことのようなのですが、大きく異なっているのが実験の仕方です。よくあるサブリミナル実験では、CMの中に数十m秒画像や言葉を提示します。非常に短いため、見ている方はみえていることが自覚できません。その短すぎて自覚できない画像の影響をサブリミナル効果です。しかし、今回の実験では、 Continuous Flash Suppression(以降CFS)という手法が用いられており(両眼視野闘争をベースにした刺激の提示方法)、十秒間も見えない目に連続提示しているのです。両眼に異なる画像を提示し、利き目の方の輝度を一定以上に高くすると,反対側の輝度の低い方の画像が認識できなくなる現象を利用して片方の目を見えなくし、その目に完成の絵を見せているのです。

当然本人は解答を見たという自覚はありません。実際見えないのですから。しかし、見えない目に見せた後にパズルを解かすと、解けるようになるのです。もともと解ける人は早くとけるようになります。なぜ解けたのかと聞くと、直観的に分かったというのです。見えていないのに、解答の絵が頭に残っていて、それを無意識に思いだしているようなのです。思い出していることさえ自覚していません。

これがどんな意味があるかというと、お店や店員さんの印象に関係しています。

スポーツでは大切にしている考え方ですが、見えていないのに見えているということがあります。周辺視野のことです。一つのものを凝視すると、見ているものの周りにあるものは見えにくくなります。この場合には周辺視野は狭くなります。反対に、全体的に見ると周辺視野がひろがり、「見ていないけど見えているもの」の量が増えます。この二つを使い分けるのが良いスポーツマンと言われています。

お店も同じです。お客様がお店に入って、なんとなく、どんな雰囲気なのかなと全体を見まわしている時。周辺視野が拡大している時です。そして、気になったものがあると、そこを凝視するのです。しかし、最初にボーッと全体を見ている時に、お店の中のいろいろなものを意識しないで見てしまっており、お店の印象を汲み取ってしまっているのです。また、食事をしているときにも、眼の端に入ってきている映像があるはずです。本人は目に入っているとは感じていません。これらも、いろいろな印象や気持ちを与えてしまっているのです。店員さんも同じです。見られていないのに見られているのです。※写真の向こう側のイスの背もたれ

よく、「神は細部に宿る」と言いますが、この言葉の意味はこういったことが背景になって言われるようになったのではないでしょうか。

お客様の経験を設計するのに、お客様が見ていないと思っているところもお客様の印象や気持に影響を与えていると考え、作り込むことが大切なのです。逆に、お客様の視野の端になるようなところを工夫することで、お客様の抱く印象や気持ちを良い方にもっていくことができるかもしれません。

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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