失敗しないお店を開業し軌道に乗せる方法

開業とは、お店を開くことではありません。お店を開き、軌道に乗せるまでを言います。

 

1.開業したらつぶれると思った方が良い

国税庁(2005年)によれば、日本の株式会社・有限会社を合わせた全法人数は約255万社あり、その内(大企業も含めて )、黒字企業はわずか3割、7割の企業は赤字です。
また、法人設立後、3年で35%が消え、5年で85%が消え、 10年で94%が消え、20年で99.7%が消え、30年で99.975%が消えます。

存続している割合でいえば、3年後には65%、5年後には15%、10年後には6%、20年後には0.3%、30年後には0.025%です。100社あれば、3年で65社、5年で15社、10年で6社しか残っていないのです。30年残るのは1000社に3社もないのです。
飲食店はもっと厳しく、3年で85%がつぶれてしまいます。

開業しても、ほとんどがつぶれてしまうのが現実なのです。
ひどいことを言うようですが、”開業したら、まず、つぶれる、3年もったらいい方”と思って正解です。

 

2.ところで、街を歩いていると不思議なお店がありませんか?

「こんなところにこんな大したことのないお店なのに、なんでつぶれないんだろう。できてから10年以上は経っているんではないだろうか。。。いったい、誰が買うんだろうか???」

なぜ潰れないのでしょうか?

そのお店が10階建てぐらいのマンションの1階にあるのなら、マンションの持ち主かもしれません。
家賃が入ってくるんで困らないんです。(昔、市川で支援した和菓子屋さんがそうでした、、、)
税金対策で赤字のままやっているお店もあります。
今は不景気で少なくなりましたが、親会社があれば、税金対策でやっている可能性もあります。

最後が、お得意さんをがっちりつかんでいる場合です。

吉祥寺の方の街道沿いにアンティークの時計屋さんがあります。
結構立派な店構えで、ちょっとおしゃれなお店です。
しかし、お店をずっと見ていても、お客さんが誰も入らないのです。
いつ行ってみても、お店をのぞいてみても客さんが居ません。閑散としています。
でも、職人さんは一生懸命下を向いて仕事をしています。
実は、お得意さまからの修理が多く、店に買いに来る人はいないのです。
修理を受け、治ったら送る。たまに買うのも、お得意様だけ。
でも、100万円もする時計を平気で買ってき、修理代も1つ数万円は下りません。
これだけで、十分やっていけます。お得意様に、良い仕事をし続ければ、紹介もきます。

もっとひどいところは、東京の中野の駅から12分の通り沿いにある小さな婦人服屋さんです。
50代向けと思われる婦人服が置いてあります。
ここも、お客さんがいません。
いつ前を通っても、お客さんがいたことがありません。
もう、20年以上になると思います。

 

キーワードはお得意様です。

お得意様を集めることに成功して、1年で繁盛店になった2つの事例を紹介いたします。
マッサージ屋さんの”かな太”さんとイタリアンレストランの”SWEET・WATER”さんです。

しかし、初めから計画通りにお得意さんを作ることはできるのでしょうか?

まずは、開店当時からお客さんに恵まれた”SWEET・WATERさん”の場合から参考にします。

 

3.イタリアンレストランSWEET-WATERさんの場合から考える失敗しない方法

<SWEET・WATERさんの今までの経緯>==============

どんなにお客さんが来なくても1年はコンセプトは変えない。

SWEET・WATERさんは、自分たちのコンセプトに合う人が多そうな所を選んで出店しています。
コンセプトは、「自分たちが近所にこんなお店があったらうれしいなと思うお店」です。
・おいしいイタリアンとワインをお手軽にとることができる。
例えば、仕事の帰りに疲れを癒しにちょっとおいしいものを食べに寄る
・想定しているお客様は、ファミリー、カップル、一人、サラリーマンとさまざまです。
・店は、この規模のまま、人を雇わず、ずっと二人でやっていきます。
・内装は、カウンターにもっともこだわって作っています。

お二人ともイタリアンでの修業が長く、開業当初から、料理もサービスもレベルの高いものでした。
評判の高い料理、蔵元まで行って確かめたワイン、シェフとお客様をつなげる気持の良いカウンター、お好みを記録しておくこと、帰り際には店の前まで出ていってお見送りすることなど、きちんとしています。

 

開業する前から、店づくり(費用や段取りなど)を雑誌社に取材されていた。

このことがきっかけで、有名な飲食店ライターさんにお店が取材され雑誌に掲載されたのです。
すると、次から次に、隠れ家レストランなどの企画で他の雑誌にも取り上げられました。

そのため、開業当初からお客さんには困りませんでした。しかし、雑誌で取り上げられたから来たという人も多く、料理を楽しまずにおしゃべりに来る客もいました。

また、近所の方も来るようになりました。しかし、居酒屋やカフェと間違えてくる人がいたり、「焼酎を置いた方が良いよ」とまで言う人がいたのです。

このようなお店のコンセプトを壊すようなお客さんに耐え、自分たちのコンセプトを守り通し、周囲になんと言われても変えないようにしてきたのです。

タベログでも料理のおいしさの評価は非常に高く、品数もシェフが一人だけの店としては非常に多くなっています。また、お客さんからは、「夫婦の仲良いですよね」といわれることがありました。タベログの感想の中にも出てきています。

 

しばらくすると、お客さんは、地元の人ばかりになってきました。

リピーターが7割を占めるようになってき、店内は、知っている顔のお客さんばかりになってきたのです。お客様には、カップルが多くなっていました。カップルといってもデートではなく、若夫婦、中年夫婦、老年夫婦といろいろの年代の御夫婦が来ているのです。

この時、お客さんが自分たちと話したがっていることに気づきました。
カップルでもお店の人と話したがっていたのです。とくに奥さんの方が話したがっていました。
そのため、忙しくてもなるべくお客様と話すように心掛けたのです。(当初は、お客さんとの距離が近くなりすぎるのではないかと心配して会話を多くするのが良いのか考えあぐねていました。)

「喧嘩しないんですか」と聞かれることもあり、「しないんですよ」と答えると感心されたり、「毎日一緒だから、休日は別々ですよね」と聞かれて、「休日も一緒です」と答えると驚かれたのです。

 

だんだん、お客さんも多くなり、予約がないと入れなくなってきました。

会社帰りにおいしいものを食べに、同僚とふらっとというわけにはいかなくなったのです。
ある日岸朝子さんが食べに来て、「おいしゅうございます」と言ってくれました。
岸朝子さんの会報にも掲載され、さらに雑誌にまた掲載されました。
また、お客さんは増えたのですが、料理そっちのけで単に話をしにくる客も来ました。
そしてしばらくすると、また、地元の常連さんが多くなってきたのです。

 

開業から1年を過ぎ、お得意様カルテを作成しました。

お得意様といえるお客様は、カップルで約80組あり、ほとんど名前を知っていました。
しかし、住所を知っているのは半数でした。このため、これから住所を聞いていく予定です。
また、年賀状を頂いた方には、年に1,2回季節のご挨拶葉書を送っています。全部で70枚程度とそんなに多くはありません。

休みですが、1年目は週休1日でやってきました。体がきつくなってきたので、2年目は隔週週休2日にしました。
売上が下がると思っていたのですが、落ちませんでした。この原因は、客の単価が高くなってきたことにあります。単価が多くなったのは、高いワインが売れるようになってきたためです。
今まで料理の売上げの方が多かったのですが、ワインの売上げが同じぐらいになってきました。(食べログには、「お勧めのワインを話してくれるのがうれしい」というコメントがあります。)

 

次の目標は、売上を落とさずに週休二日にすることです。

つまり、客単価をさらに上げなければならないのです。
しかし、食べログなどを見てもコストパフォーマンスの評価は特に高くはないため、安易に価格はあげられません。
ここに課題があります。

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SWEET・WATERさんの魅力と一番のお得意様

・お店のご夫婦の仲が良いことがお得意様には魅力的に映っています。
・もっとも惹かれているのは、地元のご夫婦、そのうちでも奥さんが一番魅力を感じているようです。
・そして、お店の奥さんや旦那さんと話しがっています。
・うらやましく思っており、「仲のいい秘訣は?」「けんかした時はどうするの?」などいろいろ聞きたいこともあるのでしょう。だからこそ、「喧嘩しないんですか」、「毎日一緒だから、休日は別々ですよね」といったことを聞かれるのです。

お客さんと会話を多くしたのは正解でした。
このおかげで、店の奥さんからのワインの提案がより喜ばれるようになり、ワインの売上も伸びているのです。

 

 

4.女性と子供のためのマッサージ店「かな太さん」の場合から考える失敗しない方法

<女性と子供のためのマッサージ店「かな太さん」の経緯>============

開業から半年たっても

かな太さんは、文京区の女性がやっているマッサージ屋さんです。お客様は女性に限っています。代表は鈴木さんという30代後半の女性で、子育て中のママさんを応援したいという思いで始めた事業です。

代表のマッサージの経験は豊富で、3000人以上を施術してきており、鍼灸も中国で学んできています。HPもあり、子連れで来れるマッサージと技術の高さがセールスポイントでした。

お店は、商店街の中ごろのマンションの1階にあり、近くにスーパーマーケットも小児科の医院もあり良い場所です。しかし、お店は小さく、入口は一間、ドア一枚分しかありませんでした(現在は駒込の近くに引っ越し大きくなっています)。知らない人は通り過ぎてしまいます。チラシも、自分で近所のマンションなどに1500枚まいていました。

開業から半年、当時、お客さんは週に3人程度しか来ていませんでした。
お客様は、OLさん、裕福な奥さん達、子育て中のママさんでした。

マッサージで上がらなかった肩が上がるようになっても、なかなか繰り返し来てくるお客さんがいません。自転車操業の状態です。どうしたらいいのか分からず、寝たきりのお年寄りもお客さんできないか、介護事業所に交渉に行くことや保険を使うことなども検討していました。

 

お得意様を作り自転車操業から抜け出したいと思いました。

そこで、なぜ、これらのお客さんが来ているのか?何が良くて来ているのか?を調べることにしたのです。

今来ているお客さんにアンケートを取りました。とりあえず、20人分です。アンケートは、満足レベルをきくものではなく、感想を自由に書いてもらい本音を探るものにしました。施術が終わった後に、手渡しでアンケートをお願いしたのです。(やっと施術が終わり、お子さんをだっこしているママさんにお願いするのには抵抗があったようですが。)

 

アンケートから、お客様の経験は3つの方向があることが分かりました。

①マッサージ自体の効果、②マッサージ中の子供の扱い、③マッサージ後のかな太さん(鈴木さん)との対話です。
①のマッサージ自体の効果は一般的に高いものでした。しかし、感激するほどではありません。
一方、②のマッサージ中の子供の扱いと③のマッサージ後のかな太さん(鈴木さん)との対話については、ママさん達が非常に喜んでました。

 

子育て中のママにとっては、

子供の扱いが非常にうまく安心してマッサージが受けられること、鈴木さんとの対話では子育ての悩みを聞いてもらえたりアドバイスをもらえることが、とてもうれしく、高い信頼感を感じていたのです。
そのため、OLさん、裕福な奥さん達・子育て中のママさん・お年寄の中から、最も良いお得意さんになってくれるお客さんは”子育て中のママさん”だということが分かったのです。
そこで、アピールポイントを”技術の高さ”から”かな太さん自身も3人の子育て中のママであること”にしました。
子育てママさんの支援というコンセプトを再度固め、年末に応援キャンペーンを打ったのです。
予約はすべて埋まり、初めてお客様のデータを作成することができました。

 

次に、お得意様は”子育て中のママさん”と決まったので、子育て中のママさんに喜ばれるサービスが他にないか探しました。

ママさんとの対話の中から悩みを拾ったり、雑誌を見たり、WEBで調べたりしました。
そして、見つけたのが骨盤矯正によるダイエットでした。
産後2年以内の方向けに、骨盤マッサージという新商品を打ち出したのです。

骨盤矯正の特徴は、開いていた骨盤が閉まることをすぐに自覚できるのですが、一旦閉まっても徐々に元に戻ってしまうことです。
そこで、施術を5回1セットとして、リピートする流れを作ったのです。
その後、骨盤マッサージをうけるお客様が、効果を自覚する方法と医者のようなカルテを作り、確実に続けて5回来るようにしました。
さらに、骨盤の模型を使って、原理や体の中の変化を分かりやすく教えています。

その結果、1ヶ月以上の予約待ちという人気店になりました。
予約が減らないため、ママさんのマッサージ師をふたり雇い入れました。
二人入れてもお客様が増え予約は1ヶ月待ちです。
順調に売上を伸ばしています。

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”かな太さん”がお得意様を獲得していった手順は以下のようになります。

①まず、既存のお客様の中から、お得意様にしやすいお客様(信頼度の高いお客様)を見つけ出します。
※アンケートやヒアリング、行動観察などを使い、もっとも信頼感を抱いてくれている方を見つけ出します。→ かな太さんでは、アンケートで子育て中のママがもっとも信頼を抱いてくれていたことを見つけ出しています。

②次に、お得意様にしやすいお客様に合わせ、アピールポイントをつくりかえます。
※アピールすることは、信頼を感じているポイント(理由)に合わせて変えます。→ かな太さんでは、ママさんに合わせるために、技術の高さから3人の子育て中であることに変えました。

③さらに、お得意様にしやすいお客様のニーズを把握し、新商品を作り出します。
※お客様との会話の中から悩みや困っていること拾い出したり、WEBのツールを使った調査をします。→ かな太さんでは、ママさんの体形の悩みまら、骨盤ダイエットが商品として出してみることにしました。

④最後に、新商品の効果をより強く感じさせる方法を考え出し、リピートするようにします。
※変化を自覚させる方法、一人一人を大切にしているということが伝えることが、リピートにつながります。→ かな太さんでは、体の変化の出たところを自覚させています。また、施術と好みや話したことを記録してくカルテを作り、毎回施術や話がつながっていくようにしています。

 

5.失敗しない開業方法とは

1.事業計画を修正をしていく前提で作る
計画の修正ができるかできないかが成否の分かれ目になります。
顧客を想定することもあまり意味がありません。
お店を開いてみて、想定通りのお客さんが来る時もあれば想定外のときもあります。
また、あまり計画を作りこむと、計画にこだわってしまい失敗の原因にもなります。

事業計画は、お客様が来て初めて作りこめるもの
・事業計画は修正することを前提に大まかに立てます。
・その後開業し、とにかく興味をもったお客様に来てもらいます(開店キャンペーンなどでお客様を集めすぎると評判を落とします)。
・来ていただいたお客様のうち、どのお客様がお得意様となるのか探っていきます。
・ターゲット顧客が決まったら、どのようにしたら満足感が高まるのか?試していきます。
この段階に来て、初めてターゲット顧客と満足させる方法が見えてきます。つまり、事業計画を作りこんでいくことができるのです。

 

2.開業したら、お客さまではなく”お得意様を集めること”が目的です。
開業した時の目標は、1日10万円、月に200万円の売上とかではなく、ファン顧客を増やすことです。売上を追っても、一見さんばかりなら、自転車操業になってしまいます。
そのためには、来ているお客様のうち、誰がファンになってくれやすいのかを見極めなければなりません。そして、ファン候補客が決まったら、その客をすごく喜ばせるにはどうしたらいいのかを考え、TRY&ERRORを繰り返していきます。

手順は、
①まず、既存のお客様の中から、お得意様にしやすいお客様(信頼度の高いお客様)を見つけ出します。
②次に、お得意様にしやすいお客様に合わせ、アピールポイントをつくりかえます。
③さらに、お得意様にしやすいお客様のニーズを把握し、新商品を作り出します。
④最後に、新商品の効果をより強く感じさせる方法を考え出し、リピートするようにします。

例えば、レストランなら以下の手順を踏んでいけば良いでしょう。
①まず、料理がおいしいこと、ワインがおいしいこと、品揃えが良いことを当たり前のことと考え、脇に置いておきます。
②次に、お得意様を、人数や来た動機、移動距離、来店の時間帯などで種類分けします。
③そして、お客様から評価されていること(料理がおいしい、ワインの品揃えが良い、接客の笑顔が良い、話題が豊富、店がきれいなど)を思い出します。
④さらに、その評価をしているひとが種類分けしたどのお得意様なのかを見つけ出します。

つまり、お得意様に店の魅力として映っているものはなになのかを見つけ出し、その魅力に一番惹かれているお得意様を特定するのです。
特定できたら、そのお得意様をさらに満足させるのはどうしたらいいのかを考えます。そのお客様が一番欲しがっているものを見つけ、提供していきます。


3.立地は慎重に決めなければなりません。
立地は変えることができませんので、失敗は許されません。
①なるべく同業者の店が出ている地域にすると安全です。
既存店と競合はしますが、お客さんがいることは確かです。
②地域の方の収入を考慮することも欠かせません。
いくらバリューの高いものを提供しても、低い収入では低価格でないと買えません。

■SWEET・WATERさんの立地選び
6000円程度のイタリアンの食事を好みそうな人の多い地域を選んでいました。ある程度、収入が高く、文化的な地域を探していたのです。しかし、現状のお得意様から考えると、”ある程度収入の高い夫婦の多い地域”を選ぶべきだったのです。
選んだ地域に夫婦が多く幸いしています。収入が高くても独身者の多い地域では、SWEET・WATERさんの良さを生かせなかったと思われます。

■かな太さんの立地選び
かな太さんの場合、若い夫婦、小さい子供のいるファミリーが多く住んでいる地域を選ばなければなりません。幼稚園や保育園が多いところが良いでしょう。
OLさんや裕福な奥さん達の多い地域、テニスクラブなどの近くでは、かな太さんはうまくいかなかったでしょう。

 


工藤 英一

About 工藤 英一

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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