AI 体験を共有することによって価値観を共有する

 

今回ご紹介するAI ( Appreciative Inquiry) は、問題を発見・分析し、それを解決するという今までの「問題解決型」の経営手法とは180度異なるものです。

 

組織や個人の良い部分を見つけ、それを伸ばしていくことにより、目標を達成していくことを目指す方法です。実は、このAI は、2005年7月に国連で開かれたGCリーダーズ・サミットでも使われたものです。

手順は、4Dサイクルと呼ばれ、4 つのステージからなります。4DとはDi scover y、Dr eam、Desi gn、Del i ver y です。
● Di scover y:うまくいったこと、嬉しかったこと、楽しかったことなど、過去において経験したポジティブなことを発見する。
● Dr eam:発見した成功体験やその要因を踏まえたうえで、今後のビジョンや夢を描く。
● Desi gn:ビジョンを実現するための計画を立てる。
● Del i ver y:計画を実行する。
どんな人、組織であっても、必ずそれまでに何らかで成功したことがあります。

 

AIで使われる質問をご紹介します

<Di scover>
1. あなたが会社の社員であることを最も誇りに思っていた時について話してください。
・それはどんな状況でしたか?
・だれが関わっていたのですか?
・何が、誇りに思う瞬間を作りだしたのでしょうか?
2. あなたは、何があなたの会社にとって最も重要な利点であると信じていますか?
それは、なぜですか?
3. あなたは優れたリーダーシップによって奮い立たせられたことがありますか?
それはいつですか?
リーダーは何をしたのですか?

<Dr eam>
1. あなたの会社の、4 年後のビジネスを想像してみます。
・どのようにビジネスを行っており、広げていますか?
・どんなリソースが使用されましたか?
・多角化していますか?
・だれが交代しましたか?
・社員はどのようにあなたの会社に魅力を感じていますか?
・人々はなぜあなたの会社にいるのでしょうか?
2. あなたの会社が、3 つの願いをあなたにかなえるというのなら、その3 つの願いはなんですか。
3. 今から4年後のあなたの会社を説明する場合、どのような3 つの単語を使用しますか。 また、なぜその3 つの単語を選んだのですか?

<Desi gn>
1. 理想とはあなたの会社にとって何であるべきですか?
2. 会社の実質的な命令系統はどんなふうになっていますか?
・あなたの会社はどのようにして、決定を下していますか?
・会社はどのようにして新しい社長や役員を決めるのですか?
・会社はどのようにして新しいことを学ぶのですか?
3. あなたの会社にどんなもののがあれば、若い社員とその家族を会社に惹きつけることができるのでしょうか?

<Dest i ny>
1. 私たちが理想の会社を創るためにクリアーすべき課題は何でしょうか?
2. だれが、その課題に積極的に取り組んでいくのでしょうか?
3. どのようにしてその計画を確実なものにして、どのようにしてプランを持続させるのですか? どのような時間的制限があるのでしょうか?

これらの質問は、その組織や会社などの状況、日頃使用する言葉にあわせ、社員が思い出しやすいように内容や言い回しを少しずつ変えていきます。

Di scover では、上手くいったときのことをリアルに思い出し、その理由、原因を見出していくのですが、会社の社員であることを最も誇りに思った時のことを思い出したり優れたリーダーシップによって奮い立たせられたときのことを思い出すことによって、上手くいった思い出や理由を引き出そうとしています。
同様に、Dr eamでは、4 年後のビジネスを想像したり3 つの願いを考えることをつうじて会社の理想の状態を思い描こうとしています。
Desi gn では会社の実質的な命令系統や若い社員を惹きつける魅力を考えることにより、理想の状態を実現するための具体策を考えます。
Dest i ny では、課題自体やその課題に取り組む人、時間などの制限を明確にしていくことにより、計画行動を社内に埋め込む方法を見出そうとしています。

これらの優れた質問によって、各工程を自然と進めるように出来ており、最終的に理想の形に向けた組織改革が内部から自発的に発生しそれが継続されるよう、設計されているのです。一方、質問をすること自体が質問者の意識を変えていくのも事実です。質問によって、自分や自分の会社の強みや良い点を思い出していくことも重要なのですが、実は、質問をすること自体で質問者の意識が変わってくるのです。自ら質問をすることによって、問題の状況へのアプローチの方法が、問題解決型からAI 的なソルーション型へと変革していくのです。

 

 

では、なぜ、質問をしたり、質問に答えることにより効果があるのでしょうか?

まず、記憶とは起こった事と五感と感情が1セットになっています。また、コミュニケーションにおいて聞き手が注意を向けるのは、言葉自体にではなく、ボディーランゲージや話し方に対してです。人は言葉を聞いているのではなく、話している人の動きや話し方から本心を感じとろうと無意識にしてしまいます。
また、人は質問をしたときに、相手の話の内容を聴いているのではなく、自分の経験と照らし合わせています。照らし合わせていき、同様な体験を思い出したとき、そのときに、起こった事のみではなくそのとき同時に湧き上がった感情や体の感覚を一緒に思い出します。そして、そのときの感情により、その出来事に対して好感や嫌悪感を再認識するのです。
答える方は、自分の経験の記憶の中からを適切なものを探しだし、思い出し、言葉にしていきます。そのときに、事象のみではなくそのときの感情や体感覚を一緒に思い出します。

すると、言葉のみではなく、表情や身振り手振りなど様々な変化が現われます。それを聞き手は感じ取っているのです。

質問をすることによって、自分や自分の組織の強みや良い点を思いおこしていくことが出来るのですが、同じように、実は質問をすること自体で、質問者する人の意識が変わってもいきます。自ら質問をすることにより、問題の状況へのアプローチの方法が、問題解決型からAI 的な切り口へと変革していくのです。

 

相手の体験を知りたいときには、相手の中に意識が向きます

「この人はどんな体験をしてどんなふうに思ったのだろう?」そう思ったときから相手の内面に注意が払われます。文章を読んで知っただけでは、それは情報です。体験者から聞いた場合は、それはあなたの体験になるのです。

なぜ体験になるかというと、話し手が内容とともに自分の感情や体感覚をあなたに伝えているからです。起こった事とそのときに湧き上がった感情、体感覚を1セットであなたに伝えているからです。相手の体験を知りたいあなたは、あなたはそれらを感じ取ろうとするからなのです。

こうして、話すこと聴くことによって、体験が共有化されていきます。

情報の共有化ではなく体験の共有化、これによって始めて気持ちを共有化していくことができます。理論ではなく気持ちで動きます。情報ではなく気持ちを共有化することによって、初めて人を動かす共通の場が出来上がるのです。質問をしたり、答えたりする。このプロセスが場を価値観を育成していきます。

 

お店や会社で、顧客に高い満足感を感じさせようとするには経営者を含め従業員全員の仕事や顧客に関する価値観が似通っている必要があります。価値観を似せるためには、同じ体験をし同じような気持ちになることが効果的です。AIでは、各従業員一人一人の体験を、メンバーがその人の体験した物語を聞くことによって疑似体験していきます。この意味で、メンバーひとりひとりの価値観を同じ方向にまとめるのに、効果的な方法です。

 

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工藤 英一

工藤 英一 について

Qualia-Partnersの代表の工藤です。ゼネコンの研究員から会社経営を経てコンサルタントになりました。自身の経験から、リピーターとの関係を深めお得意様を増やしていくことを強く勧めています。
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